桜ノ雫 ~記憶編~

煩いのが少しましになると思ったんだけどなぁ…。




〝それはね、少しづつ少しづつ

君の体温を奪い体の芯から冷やす。

たかが氷に君は殺られるんだ〟




猿鬼は炎を出して溶かそうとした。




〝無駄だよ。

僕の氷はマグマでも溶けない。

残念に…。

君が僕の友達にあんなことを

言ったからダメなんだよ?

僕がブチギレたりすると遥でも

僕を止められない〟




僕を怒らせたからダメなんだよ?



遥を苦しめたからダメなんだよ?



遥はずっと一人でその事を抱えて苦しんできた。



なのに君はそれをグチグチと遥の心の傷をえぐりここまで追い詰めた。



ここまで遥を追い詰めたら後はもう暴走するしかない。



でも、それをしていないということは遥はずっと闘っているんだ。



鬼の血に負けないように。



でも…、もう限界みたい……だね…。




遠くなる意識の中赤い目で立ち上がった遥をみた。



その額には二本の短いあの鬼のツノが生えていた。



ガラスのように透けているあの鬼特有の…にくいけど綺麗なツノが…。



そう、姿は狐鬼。



黒狐の姿に鬼のツノ、血の様に鋭く光る鬼の目。



間に合わなかった…。




ごめん…ね。



僕……やっぱ…り、君に…何……も返せ…ないや……。




氷虎の変幻を解いた僕は遠くなる意識を堪えたまま遥の構える刀を見ていた。