桜ノ雫 ~記憶編~





冬紀(side)



〝ッキッキッキ。

無駄さ。

そいつは鬼だぁ。

お前らみたいなのと相交えるような

チンケなもんじゃねぇんだよ〟




遥はずっとその事を一人で抱え込んでいたんだ。



僕達に相談せず。



そんな遥を救ったのは雪莉なんだ。



でも、今の遥には遥を支える雪莉がいない。



遥自体制御ができなくなっている。




僕の大切な友達をここまで追い込んで何がしたいんだ?



遥が何をしたんだ?



清い青の目が紅く染まって今にも鬼に乗っ取られそうな遥。



僕がこいつを直ぐに片付けていたらっ!!




「ねぇ君」




僕はまだギャーギャー言っている猿鬼の後ろに回り込んだ。




「煩いんだけど?

………黙れよ」




八つ当たりだとわかってる。



でもさ、凄くイライラするんだよね。




「ユウ!

雪莉をたたき起こしてきて」




「え?!

雪莉さんを?!

……わかりました」




ユウが飛んで行ったのを確認すると僕は赤目になって頭を抑えしゃがんでいる遥を見た。



戦ってる。



自分の中にある血と。