職員室の扉に、手をかけようとしたら。 「お前さ」 ふと、凌が私を呼んだ。 「ん?なに?」 「……時雨のこと、好きなのかよ」 ぶっきらぼうな彼は、なぜか不機嫌で。 「好きってわけじゃないけど、」 「でも付き合ってんだろ」 「……うん」 演技なんだけど、とは言えるはずもなくて。 「なぁ」 「なぁに?」 「……俺じゃダメだったわけ?」 切ないその声は。 いつも元気で騒がしい彼から放たれたものだとは、到底思えなかった。 何も言えず、戸惑いだけが浮かぶ。