「汐乃」 耳元で囁かれる切なげな声に、抵抗する気が消えてしまう。 「汐乃」 2度目に呼ばれた名前は、甘さを孕んでいるような気がして。 「麗……、」 無意識に、彼の名前を呼ぶ。 彼は私の体を自分の方に向けたかと思うと、ぎゅっと抱きしめてきた。 「麗、」 「ごめん、な」 「麗?」 何が、ごめんなの? 「お前のこと、傷つけて悪かった」 麗、それって。 「……汐乃」 あの日のことを、謝ってるの?