単純で。 でも、そこがお嬢様の可愛いところだ。 『奈々に、よろしくね』 「はい」 電話を切って。 誰も乗っていない車を運転し、家へと向かう。 ひさしぶりに帰った、碓井の家は。 「……お兄、ちゃん?」 「奈々」 「お、兄ちゃんだ……」 泣きそうな顔で近づいてきた奈々は、俺に思いっきり抱きついて。 そんなところは、昔から何も変わらない。 「な、んで?」 「家に帰ってきたらダメか?」 「そうじゃなくて……! シオと、一緒じゃないの?」