小さく、ため息をついて。 「……そんな、無茶な」 もうあれから、5年だよ?と。 自問自答してみるけれど、答えは出ない。 とりあえず、だ。 「……行くだけ、行くか」 ガラリと、よく見知ったその場所の中に入る。 当然だけど、見知った顔はいなくて。 だけ、ど。 外にまで微かに漏れていた騒がしい声。 それが、ピタリと止んで。 「……汐乃?」 懐かしい、優しい声が。 「っ、」 私の名前を呼ぶ。 なん、で。