「この間、連れ去られたとき」 あの、時? 「……ちょっと、だけ触られたけど」 そりゃあ、元々は私を襲うのが目的だったらしいから。 ……今でも少し、怖いけど。 「どこ触られた?」 「え、」 「汐乃」 どこって、はっきりとは覚えてない。 だけど。 「だ、いじょうぶ。 首筋ぐらい、」 だから大丈夫、と言おうとしたのに。 彼が首筋に唇を押し当てたせいで、思わずそれも呑みこむ。 「嘘つくな。汐乃」 ……なんで、バレるの。 「汐乃」