† 悠人
月は南中を過ぎ、夜も更けに深まり漆黒を増す。
その闇の中を、俺はシャーリーと共に飛んでいた。
箒なんてものは使っちゃいない。ローブで強化した体で、正確には『跳んで』いるんだ。
“ちょっと悠人! どこに向かうのよ!?”
シャーリーが、不満を口にする。
俺は屋根から一跳び、手近な電信柱に着地した。
片足で立ち、肩まで高さのある杖の先を、トンと電信柱の頭に打ち付ける。
その最中に答えた。
「言っただろ、魔法使いの時間だよ。お前鳥目だからわかんないんだな?」
“失礼ね! この素朴に美しい黒眼を捕まえて鳥目なんてっ!!”
「事実だろ」
カーではなくキーとほざくシャーリーへ、仕方なく教える。
「自宅の『神殿』じゃ、〝千約〟を相手にするには規模が小さいかもしれない。だから、これはちょっとした布陣だよ」
そう。すでに町中、俺のマーキングが触れ回っている。
杖先についたチョークで、東西南北、相応しい記号を刻印すれば、魔法陣の完成だ。
今日は満月。乙女座も美しい。少しくらいの無理なら……やってみせる。
月は南中を過ぎ、夜も更けに深まり漆黒を増す。
その闇の中を、俺はシャーリーと共に飛んでいた。
箒なんてものは使っちゃいない。ローブで強化した体で、正確には『跳んで』いるんだ。
“ちょっと悠人! どこに向かうのよ!?”
シャーリーが、不満を口にする。
俺は屋根から一跳び、手近な電信柱に着地した。
片足で立ち、肩まで高さのある杖の先を、トンと電信柱の頭に打ち付ける。
その最中に答えた。
「言っただろ、魔法使いの時間だよ。お前鳥目だからわかんないんだな?」
“失礼ね! この素朴に美しい黒眼を捕まえて鳥目なんてっ!!”
「事実だろ」
カーではなくキーとほざくシャーリーへ、仕方なく教える。
「自宅の『神殿』じゃ、〝千約〟を相手にするには規模が小さいかもしれない。だから、これはちょっとした布陣だよ」
そう。すでに町中、俺のマーキングが触れ回っている。
杖先についたチョークで、東西南北、相応しい記号を刻印すれば、魔法陣の完成だ。
今日は満月。乙女座も美しい。少しくらいの無理なら……やってみせる。

