† 8
炎を吹き出す剣なんて、聞いたことがない。私の『知識』が、相変わらず女の攻撃形態に対し、『無理解』の警報を鳴らしていた。
この女は、私の知っている次元とは、違う力を持っている。
あと人差し指一本分で届くはずだった手が、下から吹き上がった炎によって、肘から燃え散らされる。
腕の一本程度なら、まだ大丈夫。だけど、体をすべてやられては、どうにもできない。
判断があと四半秒遅ければ、炎は肩へ伝い胸を食らい、私を飲み込まんとしていた。
逃げを取るしかない。
炎の向こうに相手を注視しつつ、大きく飛びすさる。
女は――追撃してこなかった。
地面から吹き上がる炎がやむまで、お互いに、動かない。
その間に女は息を整え、私は、右腕の再生を終わらせていた。もっとも、右肩から先の袖は、すでにないが。
元通りになった右腕を、握っては、開く。握ったら、開く。違和感はない。ぶらりと体の側面に、いつものように下げた。
対して、アスファルトから剣を抜き取った女は、片手で切っ先を真横へ向けた。ブォンと、一瞬閃いた炎が空気をいたずらに焦がす。女の腕は、震えない。身に余る大きさの剣を片手で持っているにもかかわらず、重さなど感じさせない。考えてみれば、鎧を纏っているはずなのに、身のこなしも軽すぎる。
おそらく……そういうものだろう。『知識』が『無理解』を示している以上、今そこにある女が引き起こす事象はすべて、そういうものであるとしか言いようがない。『知識』には、ほかのことに働いてもらわないといけない。
女は、剣を真横に構えたまま、やや首を下げた。斜に構えた視線を投げてくる。
炎を吹き出す剣なんて、聞いたことがない。私の『知識』が、相変わらず女の攻撃形態に対し、『無理解』の警報を鳴らしていた。
この女は、私の知っている次元とは、違う力を持っている。
あと人差し指一本分で届くはずだった手が、下から吹き上がった炎によって、肘から燃え散らされる。
腕の一本程度なら、まだ大丈夫。だけど、体をすべてやられては、どうにもできない。
判断があと四半秒遅ければ、炎は肩へ伝い胸を食らい、私を飲み込まんとしていた。
逃げを取るしかない。
炎の向こうに相手を注視しつつ、大きく飛びすさる。
女は――追撃してこなかった。
地面から吹き上がる炎がやむまで、お互いに、動かない。
その間に女は息を整え、私は、右腕の再生を終わらせていた。もっとも、右肩から先の袖は、すでにないが。
元通りになった右腕を、握っては、開く。握ったら、開く。違和感はない。ぶらりと体の側面に、いつものように下げた。
対して、アスファルトから剣を抜き取った女は、片手で切っ先を真横へ向けた。ブォンと、一瞬閃いた炎が空気をいたずらに焦がす。女の腕は、震えない。身に余る大きさの剣を片手で持っているにもかかわらず、重さなど感じさせない。考えてみれば、鎧を纏っているはずなのに、身のこなしも軽すぎる。
おそらく……そういうものだろう。『知識』が『無理解』を示している以上、今そこにある女が引き起こす事象はすべて、そういうものであるとしか言いようがない。『知識』には、ほかのことに働いてもらわないといけない。
女は、剣を真横に構えたまま、やや首を下げた。斜に構えた視線を投げてくる。

