† シオン



少女が、低く身構えた。そのまま、こちらの膝丈の高さ、地面をこするように跳躍してくる。

リーチではこちらが勝っているにもかかわらず突進など、愚かしい。

(知性は低劣のようで、マスター)

(侮るのは愚策ですわよ、イーフリート)

堅実に、下から剣ですくい上げるように迎撃する。無論、手加減などしない。本来ならば、突進してくる少女を、喉元あたりから脳天まで二つに裂く一撃だったが、反応が速かった。こちらが切っ先を走らせたあとから動いたにもかかわらず、少女は上体を持ち上げて踏み留まり剣の先端を見送った。

間近で、敵対する少女と視線を交わす。

赤い髪、赤い瞳、白い肌……無感情に過ぎる、あどけない顔立ち。

(だれかに、似ている)

(空似では)

(でしょうね)

こんな少女が、なぜ、わたくしの閉鎖領域に吸い寄せられてきたのかは、わからない。なにかの宿命か……果たして、主催者の、理解しきれない一手か、それは計り知れない。窺い知れない。

もとより、それに思考を裂いていては、戦いの場にふさわしくない。