† 8



私の名前は、ミリアリア。おじいさまがつけた、それは私の呼称だ。私も、それを自分のものと認めているし、おそらく、こういった感情を、『気に入っている』と言うのだろう。

かつて、白いケースの中にいたときには、8と呼ばれた。八番目という意味だ。

だが、そんなことは、どうでも、いい。

私は、ミリアリアだ。

ある者は、私を、スカーレットと呼んだ。

真紅。鮮烈な命の色。

それは、生物を無生物たらしめる呼称だ。

だが、そんなことも、どうでも、いい。

私の名前は、ミリアリアだ。

私は、ミリアリアだ。

だれが、どのように呼んでも、私はミリアリアに違いない。

だから、そんなことは、どうでもいい。

にも、かかわらず。

「いいえむしろクリムゾン――深紅がお似合いよ」

「……そんなことは、初めて言われた」

私の前に現れたその人間の女は、そう、私を表現した。

真紅ではなく、深紅だと。

より暗色の漂うものだと。

鮮烈さより、濃縮されたなにかを私に見たのだ。