そうして襲い来るお客さんの波。

なぜか、ここぞとばかりにR指定の入った本ばかりを持ってくる男性客の波に、お客さんってこんなだったっけ? と、自分の職場を思い出しながら、むっちーと二人でレジを捌いていく。

「おあずかりしまーす」

「四点で四二〇〇円でーす」

「ブックカバーはおかけしますかー?」

「またご利用くださいませー」

「はいかしこまりましたー」

「ポイントカードお持ちですかー」

「ありがとーございましたー。……むっちー、さっき私が受け取ったお札、なんか湿ってた……」

「お待たせしましたー。……あー、手に汗握るってわけですね、わかります。私がさっき受け取った五〇〇円玉も、なぜか湿ってました」

「うん。手に汗握るだね。――はい、お待たせしましたー、ありがとーございましたー。……でもどうして、手に汗握られてるのかわからないけど」

「それは櫻さんに聞けばわかりますよ」

「仁さーん?」

「うん。情熱だと理解してあげて」

「情熱があると、どうしてR指定の本ばかり持ってくるんですか」

「あえて、というのがあるんだよ、男には」

「私にエプロンを着せたのもあえてなんですか」

「君が3Lのワイシャツを着ているのは?」

「あえてです。――はっ、そういうことなんですか!?」

「ぐれちゃん、第二波接近中!」

「ちょっとは休ませてーっ!」