† 村地



気分が乗ってきたところに、後頭部に痛烈な衝撃。もしや、ドブネズミの六法が飛んできたのかと思いましたが、櫻さんが分厚いコミックスを持って立っていたのでした。待って、待って、櫻さん、それ、○○コミックの特装版で、たしか返品できないはずで。

「村地。今日の君はミニスカートだろ。その状態でカウンターに乗り上がるんじゃない。そこから覗く甘い誘惑を餌食にせんと、見ろ、彼奴らがじっくりと定位置を移動し始めているぞ」

「むむっ、なんということでしょう。魔のトライアングルになりつつですよっ」

「ま、待って待って! 私ひとり状況がわかんないっ」

「落ち着いてください、くれないれんさん!」

「うわ、いきなりフルネームで呼ばれた! え、ねえちょっと待って? ぐれちゃんは? 私的にはそっちのほうが親しみがあって好」

「しっ、静かにっ。男は狼なのーよ、気をつけなさーい~」

「むっちー、それを言うならアナタの背後にいる仁さんも、さっきからアナタのヒップラインを凝視してるんだけど」

「正当防衛ですよ!」

「どっちの!?」

「そうだ、正当防衛だ。ぐれ、そんなことも忘れたのか。まったく、僕がいないと君はすぐにそうだな」

「……なんだろう、なにも言い返せない。なぜ」

「とにかくレン・クレナイさん、カウンターのこちら側へ」

戸惑っている彼女を猛獣のいる売り場に放置というのも危険でしょう。とりあえず中へ非難させます。

そのとき、はっとしました。