† 津也



そこは、草原と呼ぶにふさわしい世界だった。

足元で、動物の毛並みように、風と吹かれる緑の草原。

木の一本もない、緩い緩い、気の滅入るほど広い草原。

遥かはやや上がり調子であり、また遥かはやや下がり調子であり……

しかし結局は、空の青と草原の緑、その二つが上下を分ける地平線で終わる。

いや……そうでもないらしい。

俺の視界の及ばない先では、微妙に青の勢力が大きいように見える。

ひょっとしたなら、俺はもしや、空に浮かぶ巨大な草原の島に立っているんじゃなかろうか。

地平線を、これで何度目か眺めながら、隣へ訊ねる。

「闇珠、ここはやっぱ」

「そうね、サバイバーのための空間だと思うわ」

「だよな」

俺の肩までもない小さな女の子……闇珠は、つぶらな目をわずかにしかめた。

「ただ、島が空に浮いているなんていう非現実的空間は……私も聞いたことがないわ」

「完全な異世界ってわけだな」

「読んで文字のごとくね」