† 仁



「げっ、ごほ、がっ、ううー、あ~……苦しい。――よっ」

目を覚ました俺は、足の反動で起き上がった。

見てみれば、周囲に大和の気配はない。

身を隠している様子もなければ、花すら落ちていない。

「アイツ……なんだったん、だぁわ!?」

そして俺は、服の胸に思いっきり穴が空いているのに、気付いた。

そういえば大和に胸を鷲掴みにされ……そして俺は――。

ぞく、と震えた。なにがどうなって俺が生きてるのか知らんが……とにかく、もう大和には関わりたくない。

あんな、死すら恐れそうにない笑顔の貴公子なんざ……ごめんだ。

「うう、おーこわ。わけわかんねぇ分よけーに怖い」

とりあえず、服を着替えなければ胸の露出で公然猥褻罪だ。

慌てて公園をあとにした俺はその時、いちまいの花びらを踏んだ。

濃い桃色の、スイートピーだった。