やがて薔薇は、茨が彼女の胸の中へ、そっとしまいこんだ。

「がはっ」

と血の咳をついて、草薙の意識が覚醒する。

なんてヤツだろう、息を、吹き返した。

僕の望みを裏切ったあげく、僕の予想すら覆す。

そんなに、世界は僕が嫌いか。

「笑えないな、全然」

無事な左手に、スイートピーを握る。

濃い桃色をした花の言葉は、『離別』。

「さようなら。魔法使いさん」

僕の願いは叶わない。

だから僕は、ここにいても仕方ない。

すべては使い捨ての花のように、むなしく散ってしまった。