いっそ、一度死んだことがあります、と言ってもらえたほうが納得のいくほど綺麗な白い肌に、毒気を覆い隠すためだけに甘くなったような笑顔のマスク。

すらりとした体に細い輪郭が、存在をどこか儚げにしている。

整った顔立ちに居姿……それだけに無上の脆ささえ見せる少年は、どこか椿のようだ。

俺の問いに、いったいどこで仕入れたネタなのか、少年は恭しく腰を折った。英国式のお辞儀。

「これはこれは無礼をしました。僕は大和大地と言います。職業はてんで特徴のない高校生。見ての通り、軟弱そうな若者です」

「……ああ、そうかい」

俺は知っている。笑顔のまま自分を卑下するヤツに限って、実は腹ン中がどすっ黒く染まっていることを。

「で、その軟弱そうな若者くんが、俺になんの用だ? こんな、人払いの結界までこしらえて」

少年は、

「ああ実は、不躾で申し訳ないのですが、」

どこからともなく、花を取り出し、言った。

「古からの魔法使いさんに、どうぞ死んでもらいたいんです」