「〝千約〟――すなわち、幾千の契約を結んだ者――それが俺だ。つまり――」

そして、右手を持ち上げる。

ウリエルの火を出すまでもない。

得物は、目の前の少年がわざわざ用意してくれたのだから、これでやる。

「お前の召喚したアナフィエルすら、俺の契約内のものだ」

「!?」

少年は、さすがに頭がいい。

俺の言った意味――

つまり、魔法の根源が最初から『俺のもの』であることを、理解したようだった。

「じゃあな少年。殺すまではしないが、あばらぐらい折っといてやる」

もっとも。

「俺に喧嘩売るなら、万の公式と契約結んでこい」

すでにその時、若い魔法使いの体は、殺到した鞭で、宙に弾きあげられていたが。

月は満月、星が美しい夜。

ああ……。

お前にだけ、最高の夜だと思うな、若い魔法使いくん。