† 仁



つくづく、アナフィエルと縁があるらしい。そう苦笑せざるをえなかった。

一瞬豪快に振り下ろされた鞭の軍勢に、足場だった家は見事潰えた。

が、それだけだ。

この俺には、まったく届いていない。

いや。

目の前にいる、ヤツと同じ。届いていないのではなく、鞭が、俺を避けたのだ。

さらには、砕けた足場の代わりに、数本は足元で、忠実に俺を支えている。

「なにが、どうなって……まさか、魔法の乗っ取りとか言うんじゃねぇだろぉな!?」

まったくもって状況を理解できてない若い魔法使いが、怒鳴る。

その歳で天使を召喚するなんざ、俺でも無理だったろう。

凄まじい才能だ。

だから、せめて少年の未来に役立つことを教えてやる。

「お前、俺のことを〝千約〟って知ってるらしいが……その意味を知らないみたいだな」

鞭が、俺を高みへ押し上げる。少年を、見下す位置になった。