いくらなんでも、それはマズイ。


それこそ〝誰かに見られたら〟一大事だ。


「……じゃあ、わたし帰ります。宗ちゃん、送っていただきありがとうございました」
「あぁ」


頭を下げて、宗ちゃんに背中を向け、歩き出そうとしたわたしの腕を後ろから誰かに引っ張られた。


「えっ、宗ちゃんっ⁉︎」


そしてそのまま駅近くの路地まで引っ張られると、〝トンッ〟と壁に押し付けられた。


「ごめん、一瞬だけ……」


そう言って重ねられた、身体。つまり〝抱きしめられてる〟というわけで…。


「じゃあ、気をつけて帰ってね」


フワリ離れた宗ちゃんは、何事もなかったかのように微笑むと、来た道を戻って行った。