セイヤの指の間から見えたソレは、黒くて丸いもの。



なに…これ、甘い……




「セイヤ…なにこれ……」


まぶたが一気に重くなるよ…


もしかして、睡眠薬…?





「………ごめんな。

お前を苦しませて。お前が苦しむ必要はないから」




まるで、全て自分が背負う、と、そう言っているようだった。



セイヤはそうゆう人だ、と今日初めて気がついた。



夜月が苦しむからと、ゆりさんのことは親友の夜月にも打ち明けられないで、


公認のような2人の周りにいる人が悲しむからと、自分の思いを誰にも言えなくって。




今も私に全て言ってしまったことを後悔して、自分だけが苦しもうとしてる。





「せ、いや……」



ろれつが回らなくなってきて…なにか、大切なものが記憶から消える気がした。




「…………大丈夫、ここにいるから。


……冷たくて、ごめん」




見開こうとしても目は閉じられてゆく。


最後の最後に見えたセイヤの顔は、ゆらゆら揺れていたけれど




とっても綺麗に、儚く笑っていたんだ。




私は、セイヤを…








救えなかったのかな。





安心してよ、セイヤ。



手が冷たい人は、本当は心が温かい人なんだから…







意識がすぅっと消えて行くのが、自分でも分かった。






それと一緒に何かが消えて行くのには、気付けなかった。