今…セイヤ、私の名前を言ったかな?


ゆ、り…ゆり。ホシノ。関連性もなんにもない2つの名前。

ダブってる所もなければ文字数も違う。


全く別物。


誰かと…間違えた?

誰と?



うちのクラスにゆりなんて人いたっけ。

いや、セイヤはまず女子とはミズキか私とぐらいしか話さないし、うろ覚えだけど自己紹介の時に『ゆり』なんて人いなかった気がする。

もしかしたら他の学年かな?


いや…もしかしたら私の名前を呼んだつもりだったとか?




ドクン、ドクン、ドクン…


心臓の音が大きく聞こえるのは、止む気配がなくって。

なんでだろう、心がぎゅーっと掴まれるように苦しくなった。



人違いぐらいで、こんなに苦しくなる?普通。


いいじゃん、私が知らないだけでセイヤの知り合いなんてたくさんいるんだよ。


もしかしたら、セイヤの好きな人かもしれないじゃん…


すると胸がなぜか、ギュッと掴まれたように痛んだ。




そして…ある疑問が頭によぎった。



『じゃあ、なんで私に抱きついたの?キスしたの…?


思わせぶりなこと、私に言ったの?』



唇を噛んで…決意を固める。


……………聞こう、誰かに。

『ゆり』という名前の子がここにいるかもしれない。



ここで寝てなんかいられない。



私は体をくるっと曲げてベッドから降り、置いてあった上履きを履いた。



閉じてあったカーテンを思いっきり開けると、シャーッという音が鳴る。




「……ホシノ、もう起きたのか?

体は大丈夫か?」


カーテンの音で起きたのか、セイヤのちょっと眠そうな声が、後ろから聞こえた。

けど言葉1つ1つはしっかりしてて…きっと心配してくれてるんだと思う、けど…



セイヤが心配してるのは……誰?