バランスが崩れて前のめりになる。


危ない…このままじゃ倒れちゃう!



私はぎゅっと目を閉じた。





……あれ?痛くない。落ちないし。





ゆっくり目を開けると、目の前にはセイヤの顔。


綺麗な顔に一瞬で目を奪われる。

距離にして、数センチ。


呼吸の息でさえもほおに伝わって、こそばゆい距離感。



セイヤは固まった私を見て、少し笑いながら言った。


「そんなに嫌ならさ…

俺と、禁断の恋しちゃう?」




「…………へ?」


「もう1回言うけど拒否権はなし。絶対的な命令だから」




え…ちょっと待って。どうゆうこと?


今セイヤ、なんて言った?


「え、待って。セイヤそれってどうゆう……」


そこから先の言葉は言えなかった。



なぜなら急に私は、セイヤに思いっきり抱きしめられたから。




どうゆう、こと…?



「っ…離してっ‼︎」


ドンっと腕に力を入れて、一気に引き離した。



「……って、わあぁ⁉︎」


バランス崩したあぁぁ‼︎


いやいやいや!今度こそ…落ちちゃう!


「危ないなぁ」


セイヤのその言葉が聞こえた瞬間、私はセイヤに腕を掴まれた。

セイヤは右手を階段の手すりに、左手で私を抑えている。



そして引き寄せられる。

別に私の体重は平均。決して軽いわけじゃないけど…


いとも簡単にセイヤは私を目の前へと引き寄せた…?


………そして、ちゅっ、と私の唇に何かが触れた。



「……は?

え、ぁ、い、今…!」



唇が熱い。

顔が熱い。



だって…今、今……!



私の様子を見ながらセイヤは少し笑った。



「よろしく。これは夜月には内緒だから」


それだけ言うと階段を降りて、どっかいってしまった。


全身の力…というか、なにかの支えがなくなって、私の体はぺたんと座り込む形になった。


「いみ……意味不明だからああぁぁぁぁぁ‼︎‼︎」





私の絶叫は



寮に響き渡っている気がした。







けど、


唇の熱は、収まらないの……!