目があっても私は変わらず、



ただただ上からセイヤを睨む。

けど…セイヤは。


セイヤのほおが緩んで、片方だけ口を上げた。


そしてまた無表情になると、階段を上がってきた。


「…っ、何?」


冷静を保て。

怯えると相手になめられる。




セイヤと私の間には10段ぐらいの階段の差があった。

でもセイヤはゆっくりとしたペースで上がって来て、距離感はどんどんどんどん近付く。

私が後退しかけた時。


「……なあ、ホシノ」


セイヤは私の2段下で止まると、私に話しかけて来た。


「あいつは…夜月はさ。苦しい思いをした事がある訳よ。
みんなが夜月を気にかけてる。

けどさ…俺だって…」


今のセイヤは…うつむいていて、表情が分からない。

けどわずかに声が震えている気がする…まるで小さな子供みたいに。


「…ホシノ」


セイヤは急にぶれない声で私を呼ぶ。

上がった顔は少し微笑んでいた。


「………何?」


「俺からいい提案があるんだ。もちろんお前に拒否権はないけど」



そうセイヤは言うと、私のネクタイをぐっと引いた。


「わっ……!」