嵐の友達が袋に入れてもらったロールパンを持って食堂を出ていくのを眺めながら、俺は珈琲を飲んだ。
通学の時間が迫ってるせいか、食堂に居た生徒達は次々と出て行く。
今日は...どうすっかな?
確か、一時間目は体育だったよな。
面倒くせぇから一時間目は遅刻で良いか。
テーブルに置いた腕の上に顔を置いて目を瞑った。
少しだけ寝るか。
しばらくして、うつらうつらと微睡み始めた時だった。
「あのぉ、古沢君。一人ですかぁ?」
甘えた感じの声に顔を上げて不機嫌な視線を向ける。
ギャルっぽい女が二人テーブルを挟んで俺の前に居た。
めんどくせぇ.....。
「...なんだよ?」
出た声は低い。
「あ、あのぉ...良かったら私達と遊びませんかぁ?」
「私達も学校サボろうかと思っててぇ」
明らかに媚を売るその視線にうんざりする。
顔は...一人はまあ普通に可愛い、もう一人は...論外だな。
っうか、不細工な女は可愛い方の引き立て役にされてんな、完璧に。
っうか、三人でなにして遊ぶつもりだよ、こいつら?
「...あ...無理」
素っ気なくそう言って再び顔を伏せた。
こんなやつら構ってらんねぇわ。
不細工相手にするほど、飢えてねぇしな。
「あ...あの、でも、私達古沢君に憧れててぇ」
可愛い方が猫撫で声を出す。
「.....」
マジうぜぇ。
前までの俺ならこいつぐらいは喰ってやってただろうけど、今は全くそんな気が起きねぇんだよ。
「あ、あの古沢君。一度だけで良いんで、この子と遊んでやってくれませんか?」
不細工はもう一人の女の応援をする。
いやいや、本当にもうこんなのいらねぇんだよ。
はっきり言わねぇと引き下がりそうにねぇな?
「悪いけど。気になる女が居るから無理。一夜限りとか止めたから」
顔を上げて女達をそう言うと、ちれっと手をひらりと振った。
「えっ...そ、そんな」
涙を潤ませてアピールしてくる女にうんざりする。
その女の肩を抱いて慰める仕草をするツレも、本気でうぜぇ。
「あ...琉希也、まだ食堂に居た」
食堂のドアに目を向けたら、嵐を送っていった美樹がやって来た。
ほっと胸を撫で下ろす。
こいつが来たらもう安心だ。