「嵐、足、大丈夫か?歩くスピードが速いならそう言え」

未だに状況の飲み込めてない嵐は、目を見開いて俺を見上げる。


「...あ、うん。大丈夫だけど...」

どうして?と言わんばかりの瞳に俺が写る。


「お前を怪我させたのは俺の連れだからな。病院についてくのは当たり前だろ」

断れない理由を伝える。

元はと言えば、美樹がふざけててこいつにぶつかったのが悪いしな。


「...いやぁ、でも」

俺に連れてかれるのが嫌なのか、困った顔になる嵐。


「黙って言う事聞いてろよ。俺は何を言われようとついてくから」

嵐の耳に顔を近付けて囁いてやる。


「なっ...」

抗議の声を上げた嵐は男に免疫がないのか、急接近した俺に耳まで真っ赤になった。


クハハ...おもしれぇ。


こいつ、可愛いとこあんじゃん。



俺は嵐の反応に満足げに口角を上げた。


樋口からの視線を背中に受けながら、駅前のビル内にある整形外科を目指す。



一度だけ振り返って樋口を見た。

残念そうに眉を下げてこちらを見てる。


ざまあみろ、嵐はお前にはやんねぇよ。


嵐の腕を担いだまま、細い腰に手を当てて体を支えると、樋口に見せ付けるように体を密着させてた。


「えっ?」

驚いた顔の嵐は可愛い。


「腕だけだと、あぶねぇから」

なんて理由をつけた。


周囲の視線はもちろん俺達に集まる。


嵐は大きな溜め息をつくと諦めた様に俺にされるがままに歩く。



色々と面白くなってきたな。


心の中でほく笑む俺は、腹黒いよな。








琉希也side.end

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