あいつらが出てくる前に店を出なきゃな。

じゃねぇと見つかっちまう。


俺は珈琲を飲み干して席を立つ。


周囲がキャッキャッと騒いだので慌ててその場を後にした。



レジで金を払って店を出る。


「ありがとうございましたぁ」

店員の声を背中越しに聞いた。





店を出て、物陰に隠れて木下嵐が出てくるのを待つ。



さっき聞いた話を纏めると、あいつは小説家か漫画家ぽいよな?


つうか、17歳で働いてんのか?

あいつ凄くねぇか。


色々考えると、ドアチャイムの鳴る音がした。


慌てて視線を向ける。


するとドアを出てきたばかりの木下嵐と樋口の姿。



「本当に大丈夫ですか?」

木下嵐の肩に手を掛ける男は心配そうにしていて。


然り気無くボディータッチしてんじゃねぇよ。


「はい、大丈夫です。病院は直ぐそこなんで」

と微笑む木下嵐。


「でも...心配だぁ」

下心バレバレだな。


「あ、本当に大丈夫です」

きっぱりと断る木下嵐に残念そうに眉を下げる樋口。


あいつ、しつけぇな。


ムカつくから邪魔してやる。


俺は物陰から姿を現して、今歩いてきましたを装う。

ツカツカと二人に歩み寄る。


「よう、嵐」

手を上げて声を掛けた。


「はっ?」

嵐は間抜けな顔のまま固まった。

ま、その反応で間違いねぇよな。


お前と俺って名前で呼び合うほど親しくねぇもんな。


「えっ...あ、き、君は?」

戸惑いがちに俺を見てくる樋口をギロッと睨み付ける。



「お前さ、さっき怪我してたんじゃね?」

樋口の質問を無視して嵐に聞いた。


「へっ?な、なんの事?」

白々しく戸惑い出す嵐。


「それ、痛てぇんだろ?」

顎で嵐が庇ってる右足首を見た。


「い、いや...そ、そんなことは...」

だから、目が泳いでるから。


「病院行くんだろ?ほら、行くぞ」

嵐の返事を待たずに嵐の腕を掴んで肩に担いだ。


「...え、あ、あの...」

困ってるけど、知らねぇし。


「き、君は嵐ちゃんのと、友達かな?」

恐る恐る俺に聞いていた男に、


「ああ。同じ学校の古沢琉希也だ。こいつは俺が病院に連れてく。じゃあな?」

嘘はついてねぇし。


俺より身長の樋口を見下ろしてニヤリと口角を上げると、嵐を連れて歩き出す。


「え、いや、あの...あぁ」

残念で仕方ないと言うように肩を落とす樋口。