沖「え、大丈夫ですか?」


そう言い乍近づいてくる沖田から避ける様に私は無意識に後ろへ遠退いた。


裕「だ、大丈夫です!だから其処で止って!お願いします!」

沖「あ、はい… 何かすみません。」

裕「い、いえ、此方こそ…」


一旦落ち着きを取り戻し沖田と向かい合うように座った。ある程度の距離を取って。

自分で言っておいてなんだが、この距離感にもどかしさを感じる。

近くにいるのに離れてく。

駄目だ、そんな事考えては。

頭を振って邪険を払う。

一つ深呼吸をし、心を無にし、


「沖田さん。」

「はい。」

「好き…」

「「「すきやきだーーー!!!」」」


ガラッ


数秒間、私の中の時が止まった。


勢いよく叫びながら部屋の前に立っているのは三馬鹿。

それに驚いた私達は向かい合ったまま固まっている。


襖を開けたのは平助。

その両脇から新八と左之がひょっこり顔を出して私達の様子を伺えば、二人顔を合わせてニヤニヤしてる。


新「おやおや、俺らはお邪魔だったかな?」

左「みたいだなぁ。お二人さん、今日の夕餉はすき焼きだってよ。す、き、や、き。」

平「?何で二人ともニヤニヤしてんだよ」


唯一状況の分かっていない平助だけは怪訝な顔をしているが、その他2人は「いーから、いーから。」と平助を引き摺ってその場を後にした。


「「…………」」


取り残された私達の間に暫くの沈黙が続く。

それを破ったのは沖田だった。


沖「…何だったんですかね、あの人達。」

裕「え、ああ、ほんとに…」


本当に、折角人が勇気を出して告白しようと思ってたところだったのに。

おかけでその気持ちも大分削がれてしまった。

その上、何とも言えない微妙なこの空気に告白を切り出すまでの勇気はない。

仕方が無いのでまたの機会を伺おうと諦めるが、やりきれない気持ちが残り溜息が出た。


しかしお陰で気が抜けて、緊張感も解けたので呼吸がしやすくなった。

次は、邪魔されないようにちゃんとタイミングを計ろうと決意した。