<12月24日 午後9時>

「ふわー…眠い…。」
「理真さん、お疲れだね。」
「あ、ごめん凜玖くん。」
「ううん。今日もお仕事だったしね。」
「…運が悪いよね、日直とか。日直じゃなかったら年休取ったんだけど。」
「いやいや。俺もバイトがあったからね。」
「お店、混んでた?」
「いーや全然。クリスマスはパンじゃなくてケーキだよ。」
「そっかぁ。私は今日、結構忙しかったなぁ…。学校は休暇営業だっつーの。」
「日直は理真さんと主任さん?」
「んーじゃなくて…2コ上の先輩。」
「…しつこいって言ってた男?」
「うん。でもちゃんと距離取ったから。」
「本当に?」
「ほんとーに!」

 凜玖が意外に心配性であることは付き合い始めてから知ったことだ。普段は少し大人びているのに、心配してくれるときに年相応になる。そんな姿に理真の頬は緩んだ。

「理真さん?」
「…ごめん。心配してくれてるの、わかってるんだけど。可愛くて。」
「あ、また可愛いとか言う!」
「だって~心配してくれる凜玖くん、可愛いんだもん~!」
「理真さんが可愛いから心配してるのに!」
「ごめんごめん!心配してくれるの、すごく嬉しいよ?ほっとするから。」
「ほっとする?」

 凜玖が首を傾げた。当たり前のことだとは思うが、付き合い始めてから、今まで知らなかった凜玖の表情を知ることになった。その一つ一つを大切に思うし、知れて嬉しいとも思えた。こんな恋は生まれて初めてだ。

「…前にも言ったことあると思うけど、凜玖くんと一緒にいるとね、すごく安心する。恋人、だけど…家族みたいに。」
「家族、か…。」

 凜玖の表情が少し大人びたものに変わる。それはどんな心情の変化によるものなのか、理真には今想像することしかできない。

「あのね、凜玖くんがどういう意味で受け取ったかわかんないけど、…ドキドキしないってことじゃないんだよ?ドキドキするよ。凜玖くんのかっこいい仕草とか、笑顔とか、ドキっとする。でも、それ以上に凜玖くんがそばにいてくれることとか、私を心配してくれることは…すごく安心するの。そういう瞬間が…私は好きなんだなぁってすごく思う。」
「…俺は、家族っていい響きだなぁって。」
「え?」