<12月24日 午後6時30分>

 泰雅は心もとない気持ちで一杯だった。その理由の一つ目は自分に不釣り合いなラッピングされた袋を持っているから。そして二つ目は、待ち合わせ場所にあまりにも早く来すぎてしまって、手足の感覚がなくなってしまっているからだ。

(…浮かれすぎだろ…自分…)

 この日のこの時間に浮かれすぎているのは客観的に見ればもちろん泰雅だけではない。言ってしまえば町全体が浮かれまくっている。しかし、今の泰雅には客観性はおろか、周りの人すらよく見えていない。

「泰雅くん、ごめんなさい!遅れたっ…。」
「っ…だ、大丈夫、だ…。」

 泰雅の目に飛び込んできたのは、いつもとは少し違う真鈴だった。ベージュのダッフルコートに赤いマフラー。化粧も少ししているのだろうか。いつもと顔が違うように見えた。

「待ってもらっちゃった…かしら?」
「いや、おれ、俺が早く、き、来すぎた…だけ、だ。」

 寒すぎて、ついに口もうまく回らない。いや、口はそもそも最初から上手く回る方ではなかった。

「泰雅くん。」
「っ…!」

 いつの間にか手袋を取った真鈴の温かい手が、泰雅の頬に触れた。真鈴の触れた場所に電気が走ったくらいの衝撃を受ける。

「…やっぱり、すごく冷たい。どのくらい早くにここに?」
「…5分。」
「嘘。」

 こういうときの真鈴が強いことはもう経験値で知っている。それに泰雅は元々嘘をつくのが下手である。

「い、ち…時間。」
「一時間!?」
「でも、大丈夫。つーか俺が悪い…し。」
「もう!場所変更!身体を温めないと!」
「お、おいっ!」

 しっかりと繋がれた手に動揺しているのは、もちろん真鈴ではなく泰雅の方だった。