あの日、小柳がいなかったら…。 陸の視界を掠めていく、いつかの儚い面影を見ることもなかったはず。 風が連れてきたのか、それとも、陸の中にずっとあったからなのか…。 湿った風の中に感じたざらつきは、決して陸の思い過ごしではなかった。 ただのクラスメイトとして、彼女と業務的な会話をしていた頃には、もう戻れそうになかった。