(もし、同じ思いを感じてたなら……多分、独りでいたのには、好きだからじゃなくて、強いからじゃなくて、弱いからでもなくて、もっと別の理由があったのかな……)
誰とも話すことなく、席に座っている相園陸と小柳栞。
それは教室の中で二人だけ別世界にいるような空間。
ちらっと一目、彼のいる方を振り向く彼女。
彼は文庫本を読んでいた。
以前、二人で話題になっていた小説だ。
彼女は誰にも気づかれない程小さく微笑んだ。
(決めたから……。もう、あそこには行かない。大丈夫。もう、大丈夫だから……。)
今までの中庭で過ごしてきた時間を思い出すと、胸が締め付けられたが、彼のお陰で踏ん切りがやっとついた気持ちは、思い出を足枷などにはしなかった。
それよりも今は彼が独り抱える、“何か”を見守りたい気持ちが強く芽生えていたのだった。



