「行くぞ」
と彼が言う。
「うん!」
私が元気に答えた。
バイクが土の道を走り、
誰も使っていない壊れかけた裏門から、学園の外に出た。
学園外に出ると、
「自由だ!」
彼がそう叫んだ。
ここからはもう“春成”ではない。
その名前は、学園と共に捨てたのだから。
それは彼が、一番望んでいたことでもあった。
“多くを叶える”と書いて、
『叶多』
その名前の通り、何でも欲しい物を与えられて育った、御曹司の彼。
そんな彼にも、一つだけ手に入らないものがあった。
それは……自由。
一番欲しくて、でも手に入らないと諦めていた自由を、
与えてあげたのは、私。
彼の喜びが、しがみついている体を通して伝わってきて、
私も嬉しく思った。


