沙也子が斜め後ろを振り向いて、
遠くを指差した。
会場の上座近くのVIP席で、
大人達に囲まれている叶多くんがいた。
黒いえんび服を着た彼は、
どこかの国の王子様みたい。
そのルックスは完璧過ぎて、
怖いくらいだ。
非の打ち所のない彼だけど、
私はいつもの、制服を着崩した叶多くんの方が好き。
えんび服なんて、似合っているけど似合わない。
遠くの叶多くんを見つめたまま、
無表情を貫く私。
沙也子に言葉を返すこともしない。
何の反応もない私にクスリと笑い、
沙也子がからかってくる。
「叶多の側にいたいなら、いてもいいのよ?
19時までなら。
それ以降は婚約者として、
彼との接触を禁じますけど」
勝ち誇った目で、私を見下す沙也子。
楽しそうに「オホホ」と笑った後は、
私に背を向け、VIP席に戻って行った。


