◇◇


翌日の朝10時。


女子寮の玄関前には、タクシーが一台止まっていた。



それは、久美が実家に帰るためのタクシーだった。



外には誰もいない。


生徒はみんな授業中で、
見送りは私だけだ。



久美が目を潤ませて、私に抱きつく。




「愛美、約束守ってね。

絶対、絶対、迎えにきてね?」



「うん。この学園でやるべきことをやったら、私も退学するから。

そうしたら、二人で生きていける。

久美、色々とありがとう。
愛してるヨ……」





久美を乗せたタクシーが正門から出て、

木立の間の道路を進み、やがて見えなくなった。