その言葉に私は、顔には出さずにほくそ笑んだ。
クロアイ予知夢を書き込んだかいがあった。
これで差し迫った婚約発表は、回避できたと思っていた。
しかし――
沙也子が動いた。
10名分の署名が書かれたプリント一枚を手に取り、
じっくりと眺めている。
それからスマホを取り出し、
どこかに電話をかけ始めた。
「もしもし、E組の小橋美喜夫さんでしょうか?
私は三ノ宮沙也子です。
ごきげんよう。
―― ええ、ええ。
よろしいのよ。それはお気になさらないで。
気にしていただきたいのは……
聖夜祭中止の署名に、アナタのお名前があることよ?」
柔らかな口調で話し始めた沙也子の声が、
急に低く落とされた。
小橋美喜夫とかいう相手の声は聞こえないが、
電話の向こうの焦りが推測された。


