久美が鼻をすすった。
背中に張り付いているので顔は見えないが、涙ぐんでいるみたい。
放置されたことがよほど淋しかったのか、
それとも、お願いする相手が自分ではないことに傷ついたのか、
久美の涙の理由は、そんなところ。
久美の腕をゆっくり解いて、
椅子から立ち上がった。
肩にかけられたショールが、
ハラリと落ちる。
泣き顔の久美と向かい合い、
その頬を両手ではさんで、
軽く唇を合わせた。
久美はビックリして固まっていたが、
口元には嬉しさがにじんでいた。
唇を離し、ギュッと抱きしめて、
耳元でささやいた。
「私のためなら、何でもするって本当?
それなら、やってもらいたいことがあるの。
お願い、久美。
私をタスケテ……」


