沙也子が彼に言う。
「私と叶多の婚約が決まったわ」
「……は?」
「一年前から、叶多のお父様にお願いしていたことよ。
知らなかった?」
婚約……?
叶多くんは目を見開き、
私は驚きのあまり言葉を失った。
驚く私達を交互に見て、
彼女はしてやったりという、黒い笑みを浮かべていた。
沙也子が詳しい内容を話し出した。
二人が初めて出会ったのは、
10歳の時。
とある船上パーティーに連れられて行った際に、
叶多くんを紹介され、一目惚れしたそうだ。
それからは家の力を使い、
彼と会う機会を徐々に増やしていった。
やがて「沙也」「叶多」と名前で呼び合える、
“幼なじみ”の地位を獲得する。
沙也子は幼い頃から、静かにしたたかに、叶多くんを狙っていたという話だった。


