私の黒髪に指をくぐらせ、
彼は遊んでいた。
「庶民になりてぇ……」
心からの願望が、口からもれていた。
春成から逃げられない彼を、
救ってあげたいと思った。
全てを捨てて、私と一緒に生きて欲しかった。
“春成叶多”に憧れる女子はたくさんいるが、
憧れの大部分は、“春成”という名前に対してだ。
でも私は違う。
“春成”なんかに魅力を感じない。
お金や権力なんて欲しくない。
欲しいのは……彼、そのもの。
「叶多くん、全てを捨てて、私と一緒に逃げようよ……」
甘えた声で、誘ってみた。
「ムリ。言っただろ?春成は甘くねぇって。
俺の将来は、俺の意思じゃ決められない。
“春成”を捨てるには……
死ぬしかない」


