一流企業の御曹子と、庶民の私……


彼の素敵な顔を思い出しながら、それに付いて考えていると、

ジュースの入ったグラスが、コトリと机に置かれた。



ジュースは久美が入れてくれたもの。



「ねぇ愛美、春成様がどうしたの?」


自分の分のグラスに口を付け、久美が聞く。


彼について随分熱心に調べているのが、不思議に見えるみたい。



画面から目を離さないまま、
答えた。



「うん、叶多くんと付き合おうと思って」



そう言った直後に、ガチャンと大きな音がした。


驚いて久美を見ると、彼女はもっと驚いた顔をしていた。



大きな音は、グラスを落とした音。


ジュースがこぼれ、床にガラスの破片が散らばっていた。



久美がハッとした顔をして、慌ててガラスを拾い始めた。



「付き合いたいって……
冗談だよね?」


拾いながら、恐る恐る聞いてくる。



「本気だよ。今日嬉しいハプニングがあって、叶多くんとぶつかったの。

一目惚れってやつかな?

直感したんだ。彼が私の王子様だってことを!」



「痛っ」




久美がガラスで指を切ってしまった。


椅子から下りて久美の手を取り、切れた指先を私の口に含ませた。