建物の陰で黒い微笑みを浮かべていると、
「黒田さん」
不意に名前を呼ばれた。
ギクリとして前を見る。
マリアンヌをテーブルに置いて、
本田卓也が一人で私の前に立っていた。
今の私は変装している。
ボーイッシュなスタイルに、
黒髪は帽子にしまい、ダテ眼鏡もかけている。
人違いのフリをしようとしたけど、駄目だった。
「ずっと付けていたのは知っているから、ごまかしても無駄だよ」
本田卓也は冷たい声でそう言った。
「君の尾行に気付いていなかったら、
あんなデート計画書に従うわけないだろ」
そうも言った。


