地味男に言った言葉を、沙也子はしっかり聞いていたみたい。
「お大事に」と冷ややかなお嬢様スマイルで言われて、
ドアがバタンと閉められる。
帰ろうとしたのは私だけど、
追い出された気分で、何だか面白くない。
今すぐ戻って、仕返ししようか?
一瞬そんな黒い気持ちになるが、
思い直した。
スマホを見ると、時刻は16時40分。
早く図書室に行かないと、
マリアンヌに手紙を渡せなくなってしまう。
マリアンヌに初めて手紙を出したのは、3日前。
本の妖精ジョセフィーヌが恋を応援してくれて、
幼稚な彼女は喜んでいた。
その翌日の放課後は、
手紙に書いた適当なおまじないの通り、
愛しの彼の背中に、ハートのフセンを貼り付けようと何度もトライしているから、
静かな図書室で吹き出しそうになってしまった。


