「まだ足りねぇ……

窓ガラスを割った?部屋に火をつけた?

全然足りない。血も流れていないじゃねぇか」



「血……」



「なぁ、愛美……お前ならまだやれんだろ?

俺の愛が欲しいなら、もっと暴れてみせろ」




彼は私を立たせて、ポケットから何かを取り出した。



それを私の手に握らせる。



手を開くと、折りたたみ式のナイフだと分かった。



刃を出して、目の高さに持ち上げ眺めてみる。



太陽の光を浴びて、怪しく輝く刀身が美しかった。



その鋭利な輝きをうっとり見つめていると、

心の黒い水面が、大きくうねり出す。



パチンと刃を戻し、ナイフをポケットにしまった。



叶多くんが私の頬を指先で撫でた。



真っすぐ前を見たまま、私は何も答えない。



心に黒い刃を握りしめ、
無言で生徒会室を後にした。




――――……