花火会場が見えてきた頃には日がおちて、広がる夜空は澄んだ青。
屋台のオレンジのライトは賑やかで。
浴衣の人ごみもまた夏らしい。
ぶつかりそうになっちゃうくらい人が多いけど、手と手繋げばはぐれない。
「ちとせ、歩くの速くないか?」
「うん。大丈夫。」
「何か食うか?」
ここ最近、あんまり食欲のないあたしだけど、お祭りだもん。
「・・・フルーツ飴食べたい。」
「いいよ。行こうか。」
きっと、ちょっとだけなら大丈夫。
フルーツ飴の屋台に着けば、りんごにいちごにぶどうの飴がきらきらと展示されてる。
カラフルで可愛い・・・。
「どれがいい?」
一番小さいの。
たべ・・れるかな?
あたしが指さすと瞬がそれを引っこ抜いた。
「すんません。このいちご飴ひとつ。」
瞬は屋台のおじさんにさっとお金を支払っちゃう。
「あ・・、お金。」
「いい。払わせて。」
ぽんと手渡されたいちご飴。
「・・・ありがとう。」
ちっちゃくて可愛いいちご飴。
写真・・・とりたいなぁ。
瞬と並んで、夏っぽいところで夏っぽいものを抱えて。
「どうした?」
「一番夏っぽいところってどこかなぁ?」
「夏?そうだなぁ・・・。あ、あそこじゃね?」
そう言って指さしたのは、スイカ割のコーナー。
の近くにあるスイカの山。
商店街の人たちが、子供のために毎年やってる企画だっけ。
「あはったしかに。スイカは夏だね!」
「な。・・・しかも屋台に風鈴あんだけつけてるし、ここ1夏だろ。」
「じゃあ、あそこで写真とらない?」
「・・写真?」
「カメラ持ってきたの。」
「いいよ。じゃ行こっか」