事態を察知した里の人たちが、次々と家の中から飛び出てきた。
みんな驚いた様子で、接近してくる船を見つめている。
「あ・・・りゃあ・・・まさか・・・」
「いや、その、『まさか』だべ!」
「おい! 誰か遥峰を呼んでこい! 急げ!」
数人が大慌てで屋敷の方へ走り出す。
近くにいたおじさんが、顔色を変えて船の方を見ながらつぶやいた。
「こりゃあ・・・えれえこった」
「ねえ、どうしたの? あれってなんなの?」
地面の上を走る宝船ってのも、充分に非常識だと思うけど。
どうも里の人たちが驚いているポイントは、別の所にあるらしい。
あの宝船の正体を、みんなは分かってるみたいだ。
「ありゃ、長老の船だべ。長老の誰かが、あの船に乗ってるんだ」
「・・・てことは、個人所有のクルーザーみたいなもん?」
それを自慢げに見せびらかして、乗り回してるわけ?
うわー、イヤミなセレブ。
なにもわざわざ地面の上を、よりによって船で移動しなくたっていいだろうに。
バカな金持ちが、商店街にロールスロイスで乗り付けるようなもんじゃん。
やってることのむなしさに、自分で気付いてないのよね。
あほらしい・・・。
「ありゃ別に、見せびらかしてるわけじゃねえべさ」
「じゃあ、なんなの?」
「地上を船で移動してしまうほど、重大な用件で来ましたってことを、誇示してんだべさ」
「それって結局、見せびらかしてんじゃん」


