神様修行はじめます! 其の四


事態を察知した里の人たちが、次々と家の中から飛び出てきた。


みんな驚いた様子で、接近してくる船を見つめている。


「あ・・・りゃあ・・・まさか・・・」


「いや、その、『まさか』だべ!」


「おい! 誰か遥峰を呼んでこい! 急げ!」



数人が大慌てで屋敷の方へ走り出す。


近くにいたおじさんが、顔色を変えて船の方を見ながらつぶやいた。


「こりゃあ・・・えれえこった」


「ねえ、どうしたの? あれってなんなの?」



地面の上を走る宝船ってのも、充分に非常識だと思うけど。


どうも里の人たちが驚いているポイントは、別の所にあるらしい。


あの宝船の正体を、みんなは分かってるみたいだ。



「ありゃ、長老の船だべ。長老の誰かが、あの船に乗ってるんだ」


「・・・てことは、個人所有のクルーザーみたいなもん?」



それを自慢げに見せびらかして、乗り回してるわけ?


うわー、イヤミなセレブ。


なにもわざわざ地面の上を、よりによって船で移動しなくたっていいだろうに。


バカな金持ちが、商店街にロールスロイスで乗り付けるようなもんじゃん。


やってることのむなしさに、自分で気付いてないのよね。


あほらしい・・・。



「ありゃ別に、見せびらかしてるわけじゃねえべさ」


「じゃあ、なんなの?」


「地上を船で移動してしまうほど、重大な用件で来ましたってことを、誇示してんだべさ」


「それって結局、見せびらかしてんじゃん」