神様修行はじめます! 其の四


せっかくだから、あたしもいただこう。


そう思っておにぎりに手を出した時。


―― バサバサバサ・・・!


羽ばたく音が頭の上から聞こえてきた。


見上げると、見覚えのある鳥が一羽、権田原の上空を飛び回っている。


ん? あれって確か・・・。


「参リマスル! 参リマスル!」


鳥が甲高い声で、片言の日本語で繰り返し鳴いている。



「やっぱりあれ、太鼓橋の欄干の上の彫刻鳥だ」


「彫刻鳥? なんだそれ?」


「里同士の急な連絡とかに使われる、テレパシーを持ってる木彫りの鳥だよ」



でも、どうしたんだろう? 

あの鳥って滅多に使われるもんじゃないのに。 


参るって、何が? 何か来るの?


まさか異形のモノじゃないよね? そんな切迫した感じではないけれど。



―― ギギギ・・・ズウゥゥ・・・


・・・・・・・・・・・・なんの音?



遠くの方から、何か大きな軋む音が聞こえてくる。


音の方向に目を凝らすと、里の向こうから、大きな影がぼんやりと近づいてきた。


ゆっくり少しずつ近づくにつれ、形がハッキリ見えてくる。


そしてその正体がハッキリ分かった時、あたしはパカッと口を開いた。



・・・・・・あれ・・・・・・


船・・・・・・だよね・・・・・・?



大型客船クラスの巨大な船。


でも船体は日本独特の朱色や藍色で塗られてて、帆には豪華な房飾り。


もろにアジアンチックな木造船だ。


例えるなら・・・そう、宝船。


大きな帆を満帆になびかせて、宝船が一直線にこっちに向かってきてるんですけど。


水の一滴も無い、地面の上をスイスイと・・・。