せっかくだから、あたしもいただこう。
そう思っておにぎりに手を出した時。
―― バサバサバサ・・・!
羽ばたく音が頭の上から聞こえてきた。
見上げると、見覚えのある鳥が一羽、権田原の上空を飛び回っている。
ん? あれって確か・・・。
「参リマスル! 参リマスル!」
鳥が甲高い声で、片言の日本語で繰り返し鳴いている。
「やっぱりあれ、太鼓橋の欄干の上の彫刻鳥だ」
「彫刻鳥? なんだそれ?」
「里同士の急な連絡とかに使われる、テレパシーを持ってる木彫りの鳥だよ」
でも、どうしたんだろう?
あの鳥って滅多に使われるもんじゃないのに。
参るって、何が? 何か来るの?
まさか異形のモノじゃないよね? そんな切迫した感じではないけれど。
―― ギギギ・・・ズウゥゥ・・・
・・・・・・・・・・・・なんの音?
遠くの方から、何か大きな軋む音が聞こえてくる。
音の方向に目を凝らすと、里の向こうから、大きな影がぼんやりと近づいてきた。
ゆっくり少しずつ近づくにつれ、形がハッキリ見えてくる。
そしてその正体がハッキリ分かった時、あたしはパカッと口を開いた。
・・・・・・あれ・・・・・・
船・・・・・・だよね・・・・・・?
大型客船クラスの巨大な船。
でも船体は日本独特の朱色や藍色で塗られてて、帆には豪華な房飾り。
もろにアジアンチックな木造船だ。
例えるなら・・・そう、宝船。
大きな帆を満帆になびかせて、宝船が一直線にこっちに向かってきてるんですけど。
水の一滴も無い、地面の上をスイスイと・・・。


