もの哀しい、うすら寒い風の吹く、離れ小島の様子が目に浮かぶ。


笑い声とか、人々が交わす楽しげな会話とか、一切聞こえない静寂の島。



・・・寂しい思いをしてきたのかな。


ずっと苦労してきたんだろうか。


そんな島で暮らしていれば、とても楽な毎日じゃなかっただろう。


こいつがめっぽう明るいのって、そんな悲しい生い立ちの反動かもしれないな・・・。



「だからさ、ずっと夢だったんだよ」


浄火が振り返り、場の空気を変えるような明るい声を出す。


「里緒みたいな可愛い女の子と手を繋いで、愛を語り合うのが」



・・・明るいっつーよりも、ひたすらやっぱり、ずうずうしい!


語り合ってないっての! しかも、いまの会話のどの辺に愛が存在してんのよ!



「存在してないものを、勝手に確信すんな! お前はアブナイ宗教家か!」


「結婚する者同士が語り合えば、そりゃ愛だろ?」


「結婚なんてしない!」


「する」



浄火はニッと笑って、あたしを見ながら言い切った。



「するよ、絶対。するんだオレは」


「だから、ひとりで勝手に決め・・・!」


「里緒をひと目見た時、伝わってきたんだ。この子とオレは同じ一族だって」


「・・・・・・・・・・・・」


「オレは、この子と結婚したいって強く思った」



あたしはノドが詰まったように、声が出なくなってしまった。


とまどいながら目の前の男を無言で見つめる。


浄火の明るい表情の中に真剣な気持ちを感じて、どう反応すればいいのか分からない。