「天内さんは、ぼくが連れて行く。お前たちは先に戻っていろ」
凍雨くんが、似合わない尊大な態度でそう言った。
当主の立場を使って、術師たちを追っ払おうとしてくれているんだろう。
でも元々が凍雨くんって、俺様系の性格じゃないし。
可愛らしい顔立ちのせいもあって、どーにも迫力に欠けてる。
なんだか年少組の幼稚園児が、年長組のお兄ちゃんに向かってカラ威張りしてるみたい。
そのせいか術師たちも、簡単には引き下がらなかった。
「そのようなわけには、まいりません」
「我らに下された命令です。我らが連れて行かねばなりません」
「お前たち、ぼくの命令がきけないのか!? ぼくは氷血の当主だぞ!?」
「もちろん、存じております」
「なら言う通りにしろ!」
「失礼ながら我らに命を下した方は、長老さまにございます」
「う・・・・・・」
「当然、あちらの命令が優先されますので」
あっさり撃沈。
凍雨くんは悔しそうに唇をかみ、シュンとうな垂れてしまった。
しかし、長老だぁ? またずいぶんと大物が出てきたな。
長老があたしに会いたがるなんて、ますます理由が分かんない。
あの人たちって、一般市民と同じ部屋の空気吸うのも嫌がる連中じゃん。
平民と一分間同室にいたら、湿疹がプツプツ出る特異体質タイプなのに。


