神様修行はじめます! 其の四


「これ小僧、少しは落ち着かんか」


「だから、落ち着いてる時間は無いんですってば!」


「事情が分からねば、どこに逃げれば良いのかも分からぬわい」


「とりあえず、現世に帰っていてください!」



そう言うと凍雨君は、あたしの手首をつかんでグイグイ引っ張りだした。


ちょ、ちょっと待ってよ凍雨くん! 痛いってば!


少しくらい説明してくれてもいいでしょ!?



「事情は後で説明します! 天内さんは当分、こっちに来ないでください!」


「なんなのそれ!?」


「いいから! とにかく絶対に、こっちに戻って来ちゃだめ・・・」



凍雨くんが息を飲み、足を止める。


凍雨くんの視線の先に、数人の若い男たちが立ちはだかっていた。


全員、薄い灰色の袴を身に付けている。


ということは、まだ新米の、使いっぱしりの術師たちってことだ。



「天内の娘、ここにいたか」


「我々と一緒に来るのだ」


「各一族の当主さま方々が、大広間でお待ちだぞ。来い」



口々にそう言われて、あたしは面食らった。


当主たちが、あたしを待っているから来いって?


逃げろって言われたり、来いって言われたり、わけ分かんないんだけど。


当主たちが何の用なのよ。あたしのこと、嫌ってるくせに。



・・・・・・・・・・・・。



そこであたしは、なんとなーくピンときた。


あたしを毛嫌いしている当主たちが、あたしを会議の間に呼び出した。


くわしい事情は知らないけど、確かにあんまりいい状況とは思えない。


ようやくあたしも、ここにいたって不安を感じ始めた。