神様修行はじめます! 其の四


お岩さんとセバスチャンさんの、縁側での会話を思い浮かべる。


『自分は一生誰とも結婚しない。子どもも産まない』


そう宣言していた時の、彼女の横顔。


あの時の悲しい涙。


・・・もちろんあたしも門川君も、ふたりの未来に希望を持っている。


でも確証がないのに、期待をもたせるようなことも言えない。


一気にテンションが通常に戻ってしまったあたしは、オズオズとお岩さんの表情を盗み見た。


「おめでとう塔子さん! マロさん! わたくしも嬉しいですわ!」


「心よりお祝いを申し上げます」


ふたりの表情には一点の曇りも無い。


本当に、心から塔子さんの妊娠を喜んでいるんだ。


・・・・・・。


あたしは門川君を振り返った。


門川君はあたしに向かい、静かに微笑みながらうなづく。


・・・うん。そうだね。


門川君の言った通りだ。彼らは権田原一族だもの。


命がこの世に生まれて、その命が生きていくことを、誰よりも祝福する一族。


誇り高く、愛情深く、どこまでも逞しい。


たとえ昨日は、自分の足元の土に涙を流したとしても。


今日はその涙を土から吸い上げ、自らの糧として天に向かって伸びていく。


それが彼らの生きる形。


彼女はその一族を率いる当主。権田原 岩。


そして、彼女の生涯を支え続けると誓ったセバスチャンさん。


このふたりは大丈夫だ。負けない。


絶望や悲しみに簡単に潰されたりなんかしない。


お互いがそばにいれば大丈夫。


それに・・・・・・


あたしだって、そばにいるんだもの!